当ブログでは、各通貨ペアや市場自体の自己相関を調べる上*で、「相関係数」が度々登場します。
相関係数とは、「2種類のデータの関係性を求める指標」のことですが、その関係性をどのような計算式で数値化しているかは正しく理解する必要があります。
今回記事では、相関係数の計算式や、相関係数を計算する上で必要となる標準偏差及び共分散について説明します。
*これまで当ブログで扱った相関係数に関する記事について、以下参照ください。
相関係数、共分散の計算方法
まず、相関係数及び共分散について計算式だけ記載すると、以下の通りです。
データセットA(例えば、ドル円10日分のデータ→以下、「Aドル円」)、データセットB(例えば、ユーロ円10日分のデータ→以下、「Bユーロ円」)の関係について調べるとして、
相関係数の計算式
相関係数は、以下の式で求められます。
- 共分散(Aドル円⇔Bユーロ円) ÷ (Aドル円の標準偏差 x Bユーロ円の標準偏差)
上記式のうち、標準偏差は、前回ボリンジャーバンド計算式の記事で扱った*通り、
(期間1の値ー全期間平均値)^2+(期間2の値ー全期間平均値)^2+…(期間nの値-全期間平均値)^2 ÷ 期間n で求められる分散に√を掛けたものでしたね。
したがって、Aドル円もBユーロ円も、10日分の平均値を求めれば標準偏差も計算できます。
*標準偏差の計算式については以下。
共分散の計算式
さて、一方で共分散は別に計算が必要です。
共分散は、言葉のイメージそのまま「2つのデータの分散」を求めた値です。
分散は、「自らの値の二乗」を合計していましたが、共分散は「AとBの掛け算」を合計しています。
今回の場合でいうと、共分散の計算式は、以下のようになります。
〔Aドル円の(期間1の値ー全期間平均値)x Bユーロ円の(期間1の値ー全期間平均値)+
…Aドル円の(期間10の値ー全期間平均値)x Bユーロ円の(期間10の値ー全期間平均値)〕÷ 期間10
若干ややこしくなってきましたが、上記で求められる「共分散」をそれぞれの「標準偏差」で割り算すれば相関係数が求められます。
相関係数、共分散の計算例
では「Aドル円」と「Bユーロ円」のデータセットを仮定して、計算例をもとに計算の流れを確認してみましょう。
まず、データセットと期間の平均値について示したものが以下の通りとなります。(値は適当です。)
標準偏差を求めるまでの計算例

続いて、Aドル円とBユーロ円個別の標準偏差を求めます。
Aドル円の標準偏差は以下の通り、「2.61」となりました。(分散は6.81)

Bユーロ円の標準偏差は以下の通り、「3.37」となりました。(分散は11.36)

共分散を求めるまでの計算例
さて、今度は標準偏差と別に共分散を求めます。
計算結果は以下の通り、共分散が「-3.86」となりました。

計算過程も含め、共分散が負の値を取ること(「自らの値の二乗の計÷期間」で必ず正の値となる分散と対照的)をご確認ください。
言葉で表現すると、「Aドル円が平均値よりも高い」値となる同期間に、「Bユーロ円は平均値よりも低い」値を取る→つまり逆の動きをすると、その期間分の共分散の値は負となります。
最終的に相関係数は共分散を、標準偏差の掛け算(必ず正)で割るわけですから、逆の動きをすればするほど、相関係数は負になるわけです。
相関係数までの計算例
さて、共分散と標準偏差が分かれば後は簡単です。
Aドル円⇔Bユーロ円の共分散を、(Aドル円標準偏差xBユーロ円標準偏差)で割ります。

計算結果として、このAドル円とBユーロ円の相関係数は「-0.44」となりました。
これはやや強い負の相関傾向であり、Aドル円が上がる(下がる)ときBユーロ円は下がる(上がる)傾向があることを示しています。
まとめ
計算例が長くなりましたので、改めて簡潔に整理するとつまり相関係数とは
- 2つのデータセットの関係を示す値
- その関係とは、2つのデータセットがそれぞれ平均から同じ方向に乖離していれば正、逆の方向に乖離していれば負の値を取る形で表現される
- -1~+1の値をとり、それぞれ両極端に近づくほど強い相関関係を示す
ということです。
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