チャート分析していると、以下のようなことが、ありませんか?
- ドル円、ユーロ円両方で買いシグナルが出たからエントリーした
- 結果その後、円を軸として両ペア同じ動きをした
- 後々振り返って、これって別々にエントリーする必要あった?ドル円で2倍量ポジション持てば良かったのでは?と思った
- 結果その後、円を軸として両ペア同じ動きをした
- ユーロ円で買シグナル、ユーロドルで売シグナルが出たからエントリーした
- 結果その後、ユーロを軸として両ペア同じ動きをした(片方は勝ち、片方は負け)
- 後々振り返って、これは両建てで「リスク回避」になっていると思った
- 結果その後、ユーロを軸として両ペア同じ動きをした(片方は勝ち、片方は負け)
複数の通貨ペアを監視してトレードする意味を今一度考えてみましょう。
ただ単に「トレードチャンスを倍増させる」ためであってはいけません。それなら、一通貨ペアに絞って張るポジション量を増やせばいいだけ。上の1で上げた通りです。
また、もともと計算に入れていない「リスク回避」のためであってもいけません。上の2で上げたケースのように片方は勝ち、片方は負けるくらいならそもそも両方やらなければいいのではないか、ということです。個人で短期トレードする限り、インカムゲイン(参考:SMBC日興証券用語ページ)で利益を得る発想は基本ないでしょうから、ただ取引スプレッド分損するだけです。
大事なのは、まず通貨間相関係数を把握し、戦略を立てることです。
JPY, USD, EUR, GBP, AUD各ペアの相関係数
ということで、JPY, USD, EUR, GBP, AUDの各ペアについて相関係数の一覧表を作ってみました。
2020/7-2022/3現在まで。4時間足でサンプル2600本で集計しています。

各ペアの棒グラフにすると↓。

なお、相関係数の値の意味は↓の通り。
相関係数 rr の値 | 相関 |
---|---|
−1≤r≤−0.7−1.0≤r≤−0.7 | 強い負の相関 |
−0.7≤r≤−0.4−0.7≤r≤−0.4 | 負の相関 |
−0.4≤r≤−0.2−0.4≤r≤−0.2 | 弱い負の相関 |
−0.2≤r≤0.2−0.2≤r≤−0.2 | ほとんど相関がない |
0.2≤r≤0.4−0.2≤r≤−0.4 | 弱い正の相関 |
0.4≤r≤0.7−0.4≤r≤−0.7 | 正の相関 |
0.7≤r≤1−0.7≤r≤−1.7 | 強い正の相関 |
通貨ペアの相関係数に応じて取るべき戦略
例えば以下のように、戦略を定義することが出来ます。
- あるペアで買シグナルが出たら、他の正、負それぞれの強い相関係数が出ているペアを見て、そちらでの買い気配がないかチェックする(=他ペアを監視する意味はダブルチェック的な機能にあるとする)
- ちなみに、正の相関係数のあるペアでも買シグナルなら買いです。
- 負の相関係数があるペアでも買シグナルなら買いを手控えるほうが良いです。
- あるペアでシグナルが出て、他のペアでもシグナルが出た場合、相関関係がないペアであれば両方エントリーして良いとする。(買でも売でも)
なお、上記2については原理的には一定の分散効果が働くことを期待出来ると考えられます。
通貨ペアの相関係数についてのそもそもの考え方(参考)
さて、今回記事で取り合えた結果は4時間足で過去3年分の期間を計測した結果でした。
注意が必要なのは、「通貨ペアの相関は、計測した期間によって変わってくる」ということです。どの時間足でもどの期間でも上記のような結果になるということではありません。
例えば、ごく短期間(1分足で、ある1日の間)であれば、”要人発言があった通貨”など、つまりごく短期間で注目される通貨とのペアが相関係数の高い動きをするかもしれません。
また、ある程度の長い期間(日足で、数年以上)であれば、裁定取引を狙うプレイヤーの動きが織り込まれ、一時的でなく、より本質的な通貨間の関係性が見られるかもしれません。
いずれにしても重要なのは、通貨ペアの相関係数をどのように使いたいかという発想と、それに合わせて手法をデザインする考え方の部分であると言えるでしょう。
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