今回は、「フィボナッチ・リトレースメント」の弱点と対策についてです。
フィボナッチ・リトレースメントについて
フィボナッチリトレースメントは、フィボナッチ比率と呼ばれる比率を用いて、トレンド相場における反発や反落のポイントを見極めるテクニカル指標です。
トレンド相場であっても、価格は直線的に上昇や下落を続けるわけではありません。一時的にトレンドと反対の方向へ向かうことを繰り返しながら、トレンドを形成していきます。
上昇トレンドにおける一時的な下落を「押し目」、下降トレンドにおける一時的な上昇を「戻り目(戻り)」といいます。
この押し目や戻り目について、どれくらいの水準が価格の転換点となるかを分析するのに有用なのがフィボナッチリトレースメントです。 ~(中略)
FXの取引ツールでフィボナッチリトレースメントを描画する際は、直近の高値と安値を選択すると自動的に0%、23.6%、38.2%、50.0%、61.8%、76.4%、100.0%などのフィボナッチ比率に基づいたラインが引かれるのが一般的です。
その中で特に注目されるのが、「23.6%、38.2%、61.8%」のラインです。これらのラインが下値支持線(サポートライン)や上値抵抗線(レジスタンスライン)になりやすいと言われています。
外為どっとコム様>フィボナッチリトレースメントとは?使い方や引き方などを解説
フィボナッチ・リトレースメントは、トレンド相場における戻り幅を予測し、「押し目買い」「戻り売り」を行うためのインジケーターです。(トレンドの反転タイミングを予測するインジケーターではないことに留意が必要です。)
フィボナッチ・リトレースメントの弱点

フィボナッチ・リトレースメントの弱点は以下の点です。
- 一般的に直近の高値と安値に引くこととされるが、その基準が明確でない
- 現在のトレンド把握方法について、別で定義しなくてはならない
上図チャート例においては、価格は左部で下降、右部で上昇しています。
このように分かりやすいチャートであれば左部を下降トレンド、右部を上昇トレンドと区分出来ますが、それでもなお、どのポイントにフィボナッチ・リトレースメントを引くか決定することが出来ません。
何故なら、「直近の高値と安値」の定義が明確でないからです。
弱点への対策
フィボナッチ・リトレースメントを具体的にどう引くか、つまり「直近高値安値をどう定義するか」について、以下2つのアプローチで考えてみます。
- 過去の特徴的な高値安値として定義する(ZigZag併用)
- 過去一定期間の最高値安値として定義する(Fibonacci Zone使用)
1 ZigZagを併用する

ZigZagをチャートに表示すると、過去一定期間の、一定以上の値幅を付けた高値安値が描画されます。

この高値安値をもとにフィボナッチ・リトレースメントを描画すると、上図のようになります。
左部ではちょうど折り返し地点0.382で、右部では一度0.5まで戻ってから反転と、最初のスイングに対して描画したフィボナッチ・リトレースメントが上手く機能しているように見受けられます。
また、この使用方法はZigZagの特性(ある程度折り返したところで、過去高値安値がプロットされる)とも親和性があり、ZigZagを使うことでトレンド把握も容易になるというメリットがあります。
2 Fibonacci Zoneを使用する

Trading Viewのインジケーター「Fibonacci Zone」をチャートに描画すると、「設定期間分過去にさかのぼった中での最高値ー最安値」間にフィボナッチ・リトレースメントが描画されます。
時間が経過する中で変化するフィボナッチ・リトレースメントを連続的に把握出来る仕組みになっています。
設定期間こそ自ら決めなければいけませんが、裁量ブレなくフィボナッチ・リトレースメントを描画出来るメリットがあります。(上図チャートは、デフォルト21期間に対し、200期間とかなり設定期間を長くしています。)
連続的・自動的に描画出来るメリットがある一方で、ZigZag併用の場合に比べ「価格がある程度折り返したところでスイングを特定して認識する」機能が備わっていません。
スイングを特定せずフィボナッチ・リトレースメントを描画する、ということは結局、戻りが生じた時に、「この戻りはどのスイングに対する戻りなのか、押し目買い、戻り売りに適切か」等々を別途見極める手段が必要になるでしょう。
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