今回は、先物市場の問題点について説明します。
現物の売り手買い手双方にとって、将来にかけての価格変動リスクをヘッジ出来るという点で先物市場は有用ですが、一方で以下のような問題点が存在します。
投機家による価格操作
先物市場に参加しているのは、現物を製造する製造元、商品を購入して実際に使う需要家だけではありません。商品を実際に保有することなく、価格変動による利益を狙う投機家も参加しています。
現物を持たずとも取引可能(代わりに証拠金を差し入れる必要はあります)とする仕組みは、実際に取引されている現物の量以上に取引高を増やし、市場の流動性を高め価格の公平性を担保する上で重要な仕組みです。
しかし一方で投機家は投機的な目的でかつ市場の仕組みを逆手に取り意図的な価格変動を引き起こすことがあります。この結果、生産者の製造コストを下回ったり、需要家の調達コスト許容上限を上回るような先物価格が形成されることがあります。(本来現物市場のみであれば、生産者は赤字販売しないので売り玉が無くなり、需要家は仕入れ値だけで赤字になることを避けるため買い札が無くなるはずです。)
また投機家が大量の売買を行った結果としてさらに価格変動の波及効果、つまりトレンドが発生してしまうことがあります。
本来的には、現物取引市場のために先物市場はあると考えるとするとこうした投機家の意図的な動きは市場の信頼性自体に悪影響を与えます。
過度に悲観的な将来予想の与える影響
先物市場では、将来の商品価格に対する市場参加者の期待が反映されます。将来に対する過度の悲観的な見方が広がると、生産者や需要家が本来許容できない価格での取引が成立することがあります。(いわゆる損切)
例えば、農産物市場においては天候不良などの要因により収穫量が減少すると、市場参加者の間で将来の価格上昇が期待されます。このため、生産者や需要家は、将来の価格上昇に備えて先物市場で取引を行うことがありますがこの期待が過熱しすぎると過度に将来先物価格が跳ね上がる=需要家にとってリスクヘッジにならない状況が発生します。
将来の時期が到来してみれば、先物市場でやり取りされていた価格になっていなかった(上記の例でいえば、結局収穫高は例年と変わらなかった、などなど)ことはよくあることで、この場合単純にヘッジ損が増すことにもなります。
こうした過度な悲観等で価格が急変動を避けるため、ストップ高、安機能等抑制機能も必要になってくるのです。
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