今回は、前回記事であげた「パターン分析」の方法をもとに、
実際に「ゴールデンクロス」パターンの優位性を分析してみます。
ゴールデンクロスのパターン分析について
先の記事でもあげた通り、パターン分析には、
- パターンの定義
- トレンド発生確認方法の定義
- 情報収集機関の定義
といくつか定義が必要なため以下整理します。
ゴールデンクロスの定義について
ゴールデンクロスの定義については、非常にシンプルです。
長期の移動平均線を、短期の移動平均線が下から上に突き抜けたとき(交差したとき)を、ゴールデンクロスと呼びます。
これから相場が上昇傾向になるかもしれないという買いサインのひとつとして、相場の方向性の手掛かりになるものと考えられています。ただし、確実に上昇するとはいい切れないため、株価や為替などの価格と組み合わせて判断することが大切です。
ゴールデンクロスは、移動平均線だけでなく、MACDやストキャスティクスなどのチャート分析にも用いられています。
初めてでもわかりやすい用語集ゴールデンクロス SMBC日興証券様
短期と長期を以下に定義するかですが、今回はシンプルに短期:20SMA、長期:40SMAとします。
トレンド発生確認方法の定義について
こちらも先の記事で上げた通り、「線形回帰チャネル」でパターン発生後の価格系列相関係数を、
「True RangeとAverage True Rangeの差」でパターン発生後のボラティリティ拡大の有無を確認しようと思います。
もし、True RangeがAverage True Rangeよりパターン発生後に明らかに拡大していれば、短期的に何等かトレンドが発生していると確認できるということですね。
情報収集期間の設定について
今回は以下の通り設定して情報収集します。
- 情報収集期間:2021/1/1-2021/12/31
- データ収集区間:1週あたり1回(パターン発生時点)=1年間で最大52サンプル収集
- パターン発生時間足:4時間足(1週あたり30本)
なお、週ごとに分割し、4時間足でパターン発生を確認するため、チャートには週の始まりを図示できると良いです。週の描画に当たっては、以下Trading Viewインジケーターが役立ちます。
Highlight Last Bar of: D | W | M | Hour| H4 | Minutes
こちらインジケーターをもとに2021年のドル円を、週ごと垂直線で分割したチャート図が以下になります。

ゴールデンクロスのパターン分析結果
前置きはこのくらいにして、実際のパターン分析結果を見てみましょう。
結果は以下の表のとおりです。
なお、相関係数については、「パターン発生した4時間足~翌週の終わり」
直後TR、ATRについては「翌週の始まり~翌週の終わり」でデータを取っています。
TRらが翌週1週ベースでデータを取っているのは週足で価格比較するためです。(4時間足でトレンドが発生していれば、翌週くらいまでは続くだろう、という検証意図も含む)

結果をまとめた雑感としては以下の通り。
- 一部回(4回目や16回目)については、高い相関係数とTRーATR差が見られ、トレンドの発生が確認されるが、全体に対してごく一部。➡これだけ切り抜けばゴールデンクロスが有効パターンのように見える
- 価格系列の相関係数は押しなべて0.245と弱く、これをもとにロングエントリーするには心もとないレベル(実際のチャートを見ればよくわかる)
- 全体で押しなべてみれば、直後TRーATRの差は極わずかで、「ゴールデンクロス発生⇔ボラティリティ拡大」の因果関係は確認できない。
と、いうことでゴールデンクロス発生、という結果だけ見てトレンド発生を期待できるか、という今回検証の結論は、「トレンド発生は期待できない」ということになりました。
参考:ゴールデンクロスのチャート上推移
最後に、参考として今回検証した22回分のチャート画像を四半期ごとにわけ以下添付します。
ゴールデンクロスの直後から線形回帰チャネルを描画します。




図で見る限り、ゴールデンクロスしたからといって、きれいに価格が上昇する、とはとても言えないことが分かります。これがゴールデンクロスの実態だと思われます。
「では、さらにゴールデンクロスに制約を加えて、トレンドが発生し易そうなゴールデンクロスだけを見極められるようにしよう」と考えるのもありですが、そうするくらいなら別のパターンを検証したほうがいいかもしれませんね。
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