株式投資をして損する場合にはどのようなものがあるでしょうか。
・短期売買で単純に高く買い、安く売る場合
・配当をもらって売却したが、配当金額以上に買った時より値下がりしていて損する場合
ざっくり言ってこの2パターンしかありません。
加えて、前者に関しては株式投資すら関係なく、ただ単にタイミング売買で損しただけです。一般的に長期投資を志向する投資家が損するとすれば、後者のパターンになるでしょう。
特に売買による差益を狙わないのであれば、出来るだけ株価が値下がることは回避したいものです。
では、どうすれば、少なくとも得するように配当益>株価の値下がりとなるように上手に銘柄を選択できるでしょうか。
①配当利回り>ボラティリティとなるように銘柄を選択する
1つには、配当利回りがボラティリティを上回るような銘柄を選択することが考えられます。
配当利回りについては、上記野村証券様URLの通りではありますが、
予想される1株当たり配当額を現在時点(=取得時点)株価で割戻して計算される%になります。
ポイントとしては取得した時点の株価が低いほど相対的に配当利回りはあがる、ということです。
株価が低いころに取得した株式が数年~数十年して株価も10倍となり、企業も現在株価に対して配当するため、配当も10倍になっていた場合、配当利回りも実に10倍になる、ということもあり得ます。長期投資の妙味はまさにここにあります。
ボラティリティは変動率のことで、分散と標準偏差という観点からは当サイトでも度々触れているとおりです。
ボラティリティは値上がり値下がり両方に言える変動率のことですから、値上がれば結構ですが一方で値下がる可能性も示しており、長期保有して売ることを考えない投資家にとっては基本これは小さいほうがよい数値です。
ボラティリティは当然計測する期間によって値が変わるものです(例えば過去1時間のボラティリティと、過去1か月間のボラティリティは異なり、基本的に後者の方が大きい)。
この記事でいう「配当」に対する株価の変動率に関しては、基本的に配当が1年に1回付与されると考えれば、それに対する形で過去1年間の期間につき見るべきでしょう。
10年間株式を保有していたところで過去10年間分のボラティリティと比較する必要はない、ということです。この点も長期保有の利点になります。
ここまでを踏まえて、以下簡単な例を見てみましょう。
A:現在株価1000円、配当10円、過去1年間のボラティリティ1%/配当利回り=ボラティリティ=1%
B:10年前取得株価100円、配当10円、過去1年間のボラティリティ1%/配当利回り=10%>ボラティリティ=1%
C:現在株価1000円、配当10円、過去1年間のボラティリティ10%/配当利回り=1%<ボラティリティ=10%
このように、配当益を期待するのであれば配当利回りが高いほど(取得時点株価が低いほど)良く、また一方でボラティリティが高いほど悪い銘柄ということになるのです。
②企業の配当政策を注視する
①に関連して考えるべきことは、どうすれば配当利回りが比較的大きくて、ボラティリティが小さい銘柄を選べるかということです。
これはすなわち企業の配当政策(より厳密には利益剰余金の分配政策)を見ることとなります。あくまで長期保有投資家にとっては、これは明確に配当>成長のための投資という政策をとる企業を選ぶべきということが言えます。
簡単に言えば、企業には利益剰余金を割り振る方法として2通りあり、1つは株主に配当する(企業自身の投資には充てない)、1つは成長のための投資に充てる(株主への配当にはあてない)方法です。
前者については確実に毎期株主に配当があるものの、企業の事業拡大規模は限定的となります。
後者については株主は配当を受け取れないものの、企業規模が拡大して結果株価増大し、売却差益を期待出来る形になります。
企業はこの2つの選択肢について、株主に与えるメッセージを考慮しつつ(シグナリング)それぞれの割合を考えるのです。
理論上は後者の方が企業自身が成長する投資先に投資する以上、結果として株主リターンは大きいものになるというものですが、事業リスクが存在する故に長期保有投資家は、前者をより重視する企業を選択するべきと言えます。
まず、投資時点で見込んでいたリターンが回収できない可能性がある以上それはリスクです。また事業リスクの算定は株主には出来ず企業の公開情報を信じる他ありません。
また、投資が上手くいったかと株価が値上がりするかの因果関係も明確に見通すことは困難です。実際には理論ではなく、報道やそれを受けた投資家の反応により株価は変動しますので投資が上手くいっても市場が評価しないことは往々にしてあります。一方、投資が失敗して特別損失が発生した場合などは悲惨なもので、投資家の悲観売りによって想像以上の株価下落もあり得るのです。
ということで、事業リスクをなるべく抑え々と安定配当を繰り返し、かつそんなに株価が割高でない企業は長期保有投資家にとってはマストバイの銘柄となるのです。
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