今回は、表題IEA記事の翻訳とサマリ、私見です。
2022年はロシア紛争により、ロシア、ウクライナ由来のエネルギー、食糧資源の輸入がストップし、欧州で大混乱が生じた年でした。
しかし、表題記事によれば、2022年欧州でLNG需要が急減したのは、必ずしもロシア輸入停止によるものだけではないと述べられています。
以下翻訳、サマリ内容はいずれも引用元の内容によるものですが、翻訳ミス等ある可能性ある事予めお詫びします。
IEAレポートのサマリ
ヨーロッパのエネルギー危機において、2022年の天然ガス需要の記録的な減少を引き起こした主な要因は、以下の要因が挙げられます。
- 政策主導の変化:補助金、優遇ローン、行動変容を促すキャンペーンなどの政策措置により、風力発電や太陽光発電の容量増加など、再生可能エネルギーへの継続的な政策支援があったことが、天然ガス需要の減少に影響を与えました。
- 天候: 南ヨーロッパでの水力発電の不調な年や、穏やかな冬の気温によってガス使用量が減少しましたが、全体的には天候が原因でガス使用量が減少したわけではありません。
- 価格高騰: 特にガス集約型の産業部門で、価格高騰が需要の低下に影響を与えました。
このような要因が複合的に作用して、欧州連合の天然ガス需要は13%減少し、史上最大の落ち込みとなりました。これは、4,000万世帯以上に供給するのに必要なガスの量に相当します。
欧州におけるエネルギー消費行動変容
政策主導のキャンペーンにより、企業・家計の省エネや燃料スイッチ(LNGから石炭やバイオマス燃料といった他燃料への入れ替え)が推奨されたことにより、LNG輸入量が大幅に減る中でもEUは需給バランスを保つことが出来ました。
以下表を見ると分かるように、2022年、風力や原子力発電量も落ち込んでおり、むしろLNG必要量は増やす必要すらあったのですが、省エネや石炭、バイオマス転換により燃料そのものの需給はほぼトントンに持ち込んだようです。
また、後に述べる天候影響(暖冬)の助けもありましたが、建物でのヒートポンプ(木材、バイオマス燃料を使った暖炉)への暖房スイッチング影響も大きくLNG消費量減に貢献したようです。

2022年冬の欧州暖冬
もともと2022年冬は欧州厳冬が予想されており、エネルギー需給はひっ迫することが見込まれていたのですが、実際のところは例年よりも暖冬が続きました。
その結果、想定よりも暖房が不要となる天候が続き、燃料必要量も減少しました。
LNG価格自体の高騰
また、当然輸入が止まればLNG価格が高騰し、企業活動上採算見合わず工場稼働停止するなどして結果燃料需要が減ったという側面もあります。
LNG先物ヘンリ―ハブは、2022年初の3-4USD/mmbtuから、下半期にかけて実に2倍以上の9USD/mmbtuまで高騰しました。
燃料費は、業種によりますが生産コストの数十%を占める費用項目です。ここが2倍以上に跳ね上がると当然採算が合わず生産停止する工場も出てきます。
LNG削減によるCO2排出量削減
2022年は上記の取り組みの効果や、運にも助けられ結果LNG不足に対処出来ました。
2022年の世界のCO2排出量(LNG由来)は1億1500万トン削減され、うち1億トンはEUによるものでした。(結局、石炭石油を代わりに使ったので、差し引きトントンなのですが)
まとめ
2023年も同様の政情不安が進む中で、ますます欧州各国はエネルギー安全保障に向けた動きを加速させる必要があります。短期的には石炭石油へのスイッチングもやむなしとされましたが、再生可能エネルギーなどCO2排出量にも配慮した形でエネルギーを安定供給する必要があります。(もともとLNG自体はCO2排出量が比較的少ないので、輸入量が減るのは痛いのです。)
バイオマス燃料の活用、輸送によるロスの少ないサプライチェーンの構築といった具体的な戦略が求められるようになるでしょう。
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