国債利回りを使ったカバー無金利パリティ検証【ドル円】

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経済学においては、「カバー無金利パリティ」という考え方があります。

「ある2国の通貨に完全に代替性がある場合でかつ2国間の金利差が分かる」場合「将来の為替予想レート」が算定できるというものです。(参考:金利平価/みずほ証券 ファイナンス用語集

ざっくり言うと、「ある時点の2国間通貨価値が金利を除いて変わらない場合、為替レートの変化幅は金利差の幅になる」ということです。

今回はドル円と日米国債利回り(残存期間1年)を用いてカバー無金利パリティの検証及び考察を行います。

本記事の構成は、以下のようになっています。

  • カバー無金利パリティの前提
  • カバー無金利パリティ検証の結果
  • リスクプレミアムその他要因の考察

カバー無金利パリティ検証の前提

検証に当たって、以下の情報を用いました。(いずれもTrading View由来です。)

  • 2010/1-2021/12までのドル円チャート(月足)
  • 上記同期間の日本国債(残存期間1年)利回り(月足)
  • 上記同期間の米国国債(残存期間1年)利回り(月足)

※なお、別記事にて国債利回りを調べる方法については以下ご参照ください。

また、検証方法については、以下の通りとしています。

  • 各年1月のドル円始値を「基準レート(B)」とする
  • 同時点1月始値の残存期間1年日米国債利回り(それぞれRJ、RUS)と「基準レート」を用いて、「予想レート(E)」を算定する*
  • 翌年1月のドル円始値を「結果レート(A)」とする

*この場合カバー無金利パリティの計算式は、(EーB)/B = RJーRUSとなります。

例 B:100円/ドル、RJ:0%/年、RUS:1%/年の時、(E-100)/100 = ▲1%

E=99円/ドル (実際のA=101円/ドル…など)

すなわち、残存期間1年の国債利回り差を使い、1年後の予想ドル円レートを算出する式です。

カバー無金利パリティ検証の結果

検証結果を表にしたところ、以下のようになりました。

 B(円)RJ(%)RUS(%)RJ-RUS(%)E(円)A(円)E-A(円)
2021103.32-0.120.11-0.23103.08115.11-12.03
2020108.63-0.121.58-1.70106.78103.323.46
2019109.59-0.152.63-2.78106.55108.63-2.08
2018112.69-0.151.73-1.89110.57109.590.98
2017117.02-0.290.82-1.11115.71112.693.02
2016120.21-0.050.61-0.66119.41117.022.40
2015119.88-0.020.22-0.24119.59120.21-0.61
2014105.260.090.12-0.03105.22119.88-14.66
201386.620.100.14-0.0586.58105.26-18.68
201276.900.130.110.0276.9286.62-9.70
201181.140.140.27-0.1381.0376.904.13
201093.030.140.41-0.2792.7881.14-11.64

表中右のE-A(円)が予想レートと実際レートの差し引きです。

本来、カバー無金利パリティが成り立つのであれば、E-Aは毎年0になっていなければいけません。

それが、表をみて分かる通り全く0にはなっていません。つまりカバー無金利パリティは成立していないことになります。

リスクプレミアムその他要因の考察

何故、カバー無金利パリティは成立しないのでしょうか。

冒頭でも触れた通り、カバー無金利パリティの根本には「ある2国間通貨の価値が、金利を除いて変わらない」という考え方があります。

ですが、当然2国間においては、一定期間中、金利以外にも通貨価値に関係する様々な要素が変動します。例えば、

  • GDP成長率(より増加幅の大きい国の通貨は増価)
  • インフレ率(より増加幅の大きい国の通貨は減価)
  • 純輸出額成長率(輸出財が全て自国通貨建てと仮定/輸出超過の国の通貨は需要増=増価)

というな諸要素が影響してきます。

金利差に加えこれら諸要素を洗い出し、1年間の為替レート変動の寄与度分析をしてみるのも面白そうですね。

ちなみに…

以下別記事で検証した際には、「長期債利回りスプレッドの変化と為替レートの変動」には高い相関関係があることが分かりました。こちらもご参照ください。

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