今回記事は移動平均線(※ここでは単純移動平均線SMAについて扱います)の使い方についてです。
多くのチャートアプリで初期設定で入っていますが、大変に奥の深いインジケーターです。
使いこなすのが簡単なようでいて、極めるのは難しい移動平均線を使いこなすためには、「どういう根拠で移動平均線のパラメーター設定をするのか?」「どういう局面で移動平均線を使うのか?」といった自分の中での軸をしっかりと持つ必要があります。
今回はその根拠、考え方に焦点を当てながら、移動平均線のトレードアイデアと、やっちゃダメなアイデア計3選を紹介したいと思います。
有用アイデア①:パラメーターは20SMAを軸に設定する
まず第一に提案したいのが、20SMAを軸に移動平均線のパラメーターを設定することです。何故20SMAなのか、というと非常にシンプルで「他のメジャーなインジケーター、オシレーターでSMAを使用する際のデフォルト値になっており、参照されている可能性が高いから」です。例としては、ボリンジャーバンドのセンターラインは20SMAを参照している、等々。
移動平均線を使ううえで最も重要なことは、「他のみんなはそのラインを見ているか?」ということだと考えています。使い方などはその次に考えることです。移動平均線そのものはパラメーターをどのように設定しようが淡々と推移していくので、誰も参照していない変なパラメーター設定をしても一見意味ありげに動いているように見えてしまいます。ですので、移動平均線の動き方以外のところにパラメーターの根拠を求めるべきで、それが20SMAであるというのが私の考えです。
もちろん、例えば他事例として5,8,13SMAなどフィボナッチ数列のパラメーター設定が機能するんだ、と考えそこに根拠を求めていくのも良いでしょう。
(具体例)

ドル円日足の過去チャートを引っ張ってきて、20SMAと、その半分10SMAを表示してみました。(青が10SMA、緑が20SMAです。)
日足チャートに20SMA(+10SMA)というと極めてシンプル、ザ王道といったテクニカル分析になります。だからこそ迷いの少ない分析が出来そうですよね。
たったこれだけのラインで、
- 10、20SMAのゴールデンクロス(デッドクロス)で買い(売り)
- 20SMAサポートで押し目買い戻り売り、ブレイクで逆張り売買い
- ダウ理論を組み合わせて長期トレンドを判断し、順張り方向になるときのみエントリー
というアイデアが出来そうです。エントリーのトリガーは複数あり、複雑化しがちだからこそパラメーターはブレないよう、固定化すべきでしょう。
有用アイデア②:下位足、上位足と重なるパラメーターを設定する
続いては、あえてその時間足内でのパラメーターにこだわらず、「下位足、上位足で重視されるSMAと重なる」パラメーター設定をするアイデアを提案します。原理はアイデア①と同じで、「出来るだけ多くの人が見ていそうなパラメーターを設定する」ことにあります。
簡単な計算ですが、各時間足のSMAの関係について下表整理しました。
時間足 | 上位足との比較 | 例えば… |
5分足(5m) | ⇒30分足SMAx6倍 ⇒1時間足SMAx12倍 | 5分足60SMA=30分足10SMA |
30分足(30m) | ⇒1時間足SMAx2倍 ⇒4時間足SMAx8倍 | 30分足100SMA=1時間足50SMA |
1時間足(60m) | ⇒4時間足SMAx4倍 ⇒日足SMAx24倍 | 1時間足120SMA=日足10SMA |
4時間足(240m) | ⇒日足SMAx6倍 | 4時間足120SMA=日足20SMA |
日足(1440m) |
アイデア①が正しい、すなわち、20SMAを多くの人がフォローするという前提があるとして、下位足、上位足、現在の足20SMAを一つのチャートに表示すれば、簡易ですがマルチタイムフレーム分析も出来てしまいそうです。
(具体例)

ドル円1時間足過去チャートに、10SMA(赤/30分足20SMA)、20SMA(橙)、80SMA(紫/4時間足20SMA)を表示した結果が上の表です。
ラインが1本増えてやや複雑になりましたが、
- 各SMAでサポートされた場合、(それぞれの時間足で)エントリーするプレイヤーが多いと考える
- パーフェクトオーダー(10,20,80SMAの順あるいは逆に並ぶ)でないときはエントリーを控える
- あえてパーフェクトオーダー崩れ+ダウ理論を組み合わせてトレンド初動を取る
などなど、シンプルながらもいくつかのやり方が思いつきそうです。
追記:パーフェクトオーダーについて、ひとくくりに移動平均線のカテゴリで語れない難しさがあります。また、別記事にて紹介しようと思います。
ダメアイデア③:細かいパラメーターにこだわりすぎる
最後に、これまでのアイデアの裏返しで、検証の結果当てはまりやすかったパラメーターを設定してしまう例を挙げます。
過去検証の中で、ドル円10年分分析し、仮に「37SMAと63SMA」を組み合わせてトレードすると過去検証においては勝率が高かったとしましょう。
(具体例)

ここまで読んで頂けたのであれば納得いただけたのではないかと思いますが、この「37,63」という数字には何の根拠もないわけです。偶然「ドル円過去10年のデータにおいては37,63が当てはまりやすかった」だけです。将来においてもそう動く、という確証はないわけですね。それよりはみんなが見ていそうな20SMAを見たほうが良い、と思いませんか?
私見が長くなって恐縮ですが、こういう「パラメーターそのものをいじる」ために過去検証を行うべきではないと思っています。その結果行きつくのはカーブフィッティングですし、実際に運用してみて結果が出なければまたパラメーターをいじる、では結局何もしていないのと同じではないでしょうか。
まとめ
移動平均線は、サポレジラインとしても使えたり、クロス、パーフェクトオーダーなどトレンドの転換強さを知ることも出来、非常に有用なインジケーターです。
だからこそパラメーター設定はシンプルにするべきだと思います。移動平均線を使ってトレードするのであれば、勝てない時期に「パラメーターがおかしいのではないか?」と安易な考えに走ることがないように、シンプルかつ根拠のある考え方をベースに運用していきましょう。
ついでに
前回までのFXトレードルール記事リンクを以下貼り付けておきます。
興味あればぜひご覧下さい!
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