ドル円(USDJPY, 4時間足)は200単純移動平均線(SMA)から3%以内にほぼほぼ収まるのをご存じでしたか?
ドル円の価格レンジの話です。それも200SMAを起点にした場合のです。
以下、2019年ー2021年現在までのデータをご覧下さい。
マイナス | |||||||
200SMAからの乖離 | -3.0%以上 | ~-3.0% | ~-2.5% | ~-2.0% | ~-1.5% | ~-1.0% | ~-0.5% |
データの収まり | 100.00% | 97.23% | 95.57% | 93.61% | 86.98% | 72.58% | 45.59% |
プラス | |||||||
200SMAからの乖離 | ~0.5% | ~1.0% | ~1.5% | ~2.0% | ~2.5% | ~3.0% | 3.0%以上 |
データの収まり | 44.35% | 73.83% | 86.89% | 93.72% | 96.42% | 99.35% | 100.00% |

ちょっと見づらい図で恐縮ですが、上記のデータは要するに,
- ドル円4時間足は200SMAから、+/-3%に97.23%、+/-2%に93.61%、+/-1%に72.58%が収まる
- つまり、4時間終値が+/-3%に到達した場合、97.23%の確率で反発する(2%、1%も上記同様)
ということです。
で、だからなに?ということですが、
- インジケーター「エンベロープ」を使った逆張りアイデアに使えるのではないか?
- 順張りシグナルが発生していても、200SMAから一定乖離しているときは一旦エントリーを控える、という対応が取れるのではないか?
という考察が得られた、というのが今回の記事の結論です。
以下、なんでこんな検証をしたの?とか、検証方法とか、考察について詳しく書いていきます。
長期的に勝てる原理の話
長期間で見て安定して勝てるトレードルールってなんなんでしょう?皆さんは深く考えてみたことはありますか?
書籍を読んだりブログなどで情報収集をしていると、どうも「マーケットの原理」を利用した仕組みであれば、どの金融商品でも、どの時間足でも勝てるとのこと…(マーケットの魔術師とか、有名な書籍では大体そういう風に書いていたりします。)
本当だったらすごく魅力的な話ですよね。僕自身、トレードルールは原理原則を根拠に作りこみたいと思っています。
(原理原則の逆の例を挙げてみましょう。通貨ペア○○では82SMAと、205SMAのゴールデンクロスが良く機能する…みたいなもの。⇒何の根拠があるんじゃい、と思っちゃいますね。こんなものはカーブフィッティング以外の何物でもないでしょう。)
ただ、じゃあ何が「マーケットの原理」で、それは具体的な定量データでどう表されるのか?そこについての情報はあまりネット上のそこらに転がっていたりしません。なので自分で調べてみることにしました。
レンジが形成される「価格収束の原理」について
ということで「マーケットの原理」について、今回は「価格はいずれ(均衡価格に)収束する」というものを扱ってみたいと思います。
この原理は要するに、「トレンドが形成され価格が一方向に進んでいくのはマーケットがパニック状態にあるということ」「マーケットが落ち着きを取り戻せば、価格はいずれ均衡的な価格に収束する」という考え方のようです。
この原理の根拠って?とか、じゃあ均衡価格って何?とかそういった小難しい話は本記事では述べません。(詳しい人がいたらむしろ教えて頂きたい…)
上記の原理が正しいと仮定して、実際の通貨ペアで検証するのが本日の目的です。今回は私も愛用するドル円4時間足のチャートで検証することにして、以下のように仮説・条件設定しました。
仮説:「価格はいずれ収束する」という原理が正しいのであれば、
- ドル円4時間足の価格は200SMA(長期間の平均価格≒均衡価格と考える)に収束していくはず。
- 収束していくということは、つまり200SMAから一定の範囲に価格が収まるはず。
- ある程度長期間のデータを集めないと、その年のイベントなどでデータが歪んでしまうはず。3年分はデータを集めよう。
検証方法など
と、いうことで得られたデータが以下の図です。

検証に当たってはTrading Viewの「チャートデータのエクスポート」機能を使って価格データを集めました(プレミアム機能ですが)。Trading Viewほんと凄い。ほんと便利です。でもって集まった終値、200SMAなどのデータをもとに、
- (終値 ー 200SMA) ÷ 200SMA
の計算式で「200SMAからの乖離率」を出して、データをグラフ化したのが以上の図です。
考察
得られた考察については、まず冒頭でも述べた通り、以下のようなものがあります。
- ドル円4時間足は200SMAから、+/-3%に97.23%、+/-2%に93.61%、+/-1%に72.58%が収まる
- つまり、4時間終値が+/-3%に到達した場合、97.23%の確率で反発する(2%、1%も上記同様)
また、グラフの形が左右対称、正規分布に近い形になったことも非常に興味深かったですね。3年分のデータをもとにした今回検証の中では「ドル円4時間足の終値は200SMAを中心に正規分布に近い形でバラついている」ということが言えそうです。
では、これが「価格は収束する」ということの実証になるかというと、これだけでは不十分で実際のチャートの動きも見てみる必要があります。まあ、例えば-3%乖離していた終値が、次の足では+3%になる、なんてことはないですから、基本はジワジワと収束していく形になるのでしょう。
検証結果のトレードルールへの応用
この検証、もともと何のためにやったかというと、「長期的に勝てるトレードルールづくり」のためでしたね。
詳細な過去検証については別の機会に回しますが、今回検証結果を具体的なトレードルールへ落とし込んでいくアイデアとして、以下のようなものを挙げておきます。
- インジケーター「エンベロープ」を使った逆張りアイデアに使えるのではないか?
- 順張りシグナルが発生していても、200SMAから一定乖離しているときは一旦エントリーを控える、という対応が取れるのではないか?
インジケーター「エンベロープ」について、Trading Viewで試しに実際のチャートに適用してみました。(ドル円4時間足/200SMAを中心に3%レンジで表示)

ボリンジャーバンドとちがい、常にSMAから一定のレンジを表示し続けるのがエンベロープの特徴です。
トレードルールのアイデアについて、例えば、「3%の価格レンジを超えた後、戻ってきたタイミングで逆張りエントリー」というものが考えられそうですね。(図中楕円で表示)
ストップロスは3%ライン乃至直近の高値安値、目標ポイントは200SMAといったところでしょうか。
とはいえ、図の例は3%を超えた後急落しています。こういう場合ストップロスをどう設定するかが難しいですね。
また、もう一つのアイデアとして、順張りシグナルが出ていても、「3%は超えないだろう」と想像して3%を利確目標に置く、またはエントリーを控えるというものも考えられます。

再度同じ図に水平線を引いてみました。(参考のための適当な線です。)
この水平線を下に抜けると売シグナルだったわけですが、そこを抜けた後で「3%が近いのでそこを目標ラインにしよう」または「近いからエントリー」を控えよう、という判断に3%ラインを使うということですね。(この時は結局急落していますが、それはあくまで結果論。)
まとめ
今回は「価格は収束する」という原理をもとにドル円で実証分析を行い、面白い結果が得られただけでなく、そこからトレードルールのアイデアもいくつか出すことが出来ました。また別の機会に、他の原理についても実証してみたいと思います。
もう一つ、読者の皆様にお伝えしたいということとして、ぜひご自身でも分析をしてみて頂きたいです。このアイデアをもとに自分で過去検証をするなり、別のペアで試してみるなり…ぜひ分析を楽しんんで頂ければと思います。この先は君の目で確かめてくれ!(ファミ通)というやつですね。
FXには単一の正解がなく、どのトレードルールをもって正解と考えるか、自分でしっかりトレードルールについて腹落ち出来ているかが重要、というのが個人的意見です。でもって、腹落ちのためには分析は必須も必須、絶対に欠かしてはいけない要素です。
分析なんて簡単ですから、ぜひTrading Viewなり、MT5なりをインストールして色々分析してほしいと思っています。
ではまた。
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