前回記事*の中で、RSI(相対力指数)の計算式について確認し、「30以下」「70以上」という特定のパラメータに厳密な意味はなく、RSIはあくまでどの程度買いと売りが継続しているかを示す指標でしかないことを確認しました。
今回は、RSI有効活用のための異なるアプローチとして、「RSIと価格の相関関係」について、実際のドル円データ分析をもとに確認しようと思います。
もし、RSIと価格の推移について相関が見られるのであれば、
- RSIが上昇すると予測すれば買い
- RSIが下降すると予測すれば売り
という手法自体に優位性があると言えるでしょう。
*前回記事については以下をご参照ください。
RSI計算式と相関計算方法について

まずは、改めてRSIの計算式を例をもとに確認し、「価格とRSIの相関」をとる場合、どこの値を突き合わせることになるか確認してみましょう。
RSIとは、設定期間の値上がり幅÷(値上がり幅+値下がり幅)x100で計算されます。
また、設定期間(上図では14期間)を超えると、最新の数値を加え最古の数値を消して再計算されます。(上図、期間15では、期間15の「終値ー始値」をカウントし、期間1の「終値ー始値」をアウト)
今回相関を見るのは、各「終値ー始値」(B)⇔各RSI(C)、RSIスプレッド(D)の間ということになるでしょう。前回記事で触れたとおり、終値の値そのものはRSIの計算に関係がないので、終値ー始値との比較になります。
さらに言えば、RSIスプレッドを一つ後にずらした場合(E)と各終値ー始値(B)に相関があれば、
「RSIスプレッドを見てから売買する(=一つ後の価格になる)」手法にも優位性がある、と確認できそうです。
RSIと価格の分析と結果
まずは、分析の前提を確認しましょう。
ドル円を用いて以下パラメータで確認しました。
- 時間足:日足、1時間足、15分足(長~短時間足で測定)
- データ採取期間本数:2000以上
- RSI:設定期間14
分析の結果について、以下の通りとなりました。
期間 | |||
相関 | 日足 | 1時間足 | 15分足 |
「終値ー始値」⇔RSI | 0.603703562 | 0.583663405 | 0.615179616 |
「終値ー始値」⇔RSIスプレッド | 0.761260543 | 0.734040661 | 0.751907231 |
「終値ー始値」⇔RSIスプレッド一つずらし | 0.030368872 | -0.003603735 | 0.014209116 |
分析はエクセルで以下のような感じで行っています*。

分析結果まとめ
得られたデータからの考察をまとめると、以下の通りです。
- 「終値ー始値」とRSI,RSIスプレッドの相関はいずれの時間でも0.6、0.75程度と強い相関であったが、1.0では無かった。 … a
- 「終値ー始値」とRSIスプレッド一つずらしの相関はいずれの時間でもほぼ0に近かった。… b
aについていえば、「価格が上がれば(下がれば)RSIは上がる(下がる)」と、聞いてみれば当たり前の事実を確認したに過ぎないのですが、しかし、
- 次の期間RSIが上がると見れば買い、RSIが下がると見れば売り
という判断に優位性があると言えそうです。
イメージのため、簡単な例でいえば、一気にRSIが30から70に向けて上がっている時、または逆に70から30へ下がっている時は難しく考えず買い(売り)をすれば勝つ可能性が高いということです。
また一方で、「終値ー始値」とRSI比較で、説明のつかない残り0.4部分については、「価格は上がるがRSIは下がる」が起こっているということになります。いわゆるダイバージェンスの状態です。
この結果から、またダイバージェンスは全体のそれなりの量(0.4)を占めているとも言えます。ダイバージェンスが100回に1つの割合(残りの99回はRSIと価格が相関を持っている)前提がもしあれば、ダイバージェンス発生後即エントリーの勝率は極めて高い(後は基本的に価格とRSIが連動する)と言えますが、現実はそうではない、ということです。
単にダイバージェンスが発生したから逆張り、というのではなくこちらも、全体のうちの0.4の中からどこがエントリーすべきダイバージェンスのタイミングなのか絞り込みすることが必要ということです。
bについていえば、つまり「RSIが上がった(下がった)のを見てから買い(売り)」という手法には、全く有意性がないことが分かります。相関が0に近い、ということは逆も然りなので、「RSIが下がった(上がった)のを見てから買い(売り)」にもまた優位性はありません。
これは厳密には「RSIの上昇量」と「価格の上昇量」との相関なので、「RSIが大きく伸びた次の足で、価格はほとんど上昇しなかった」、または「価格が大きく伸びた次の足で、RSIはほとんど上昇しなかった」というパターンについても「ほぼ相関しないデータ」として含まれてはいます。
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