今回は、分割エントリーの定義と、分割エントリーをすることで得られるプレッシャーの軽減など心理的な効用について紹介します。
今回記事は、以下のような方に向けて書いています。
本記事は先に定義について触れ、心理的効用について述べる構成となっています。
心理的効用のみ読まれる方は前段を飛ばしてお読み下さい。
分割エントリーとは

分割エントリーの心理的効果について述べる前に、まずは定義と利益損失の観点について整理します。
分割エントリーの定義
分割エントリーはつまり、本来「一度のトレードで持つポジション量」を、「時間」と「ポジション量」を分割して獲得していくということです。
例えば、下表のように考えてみましょう。
通常(全量エントリー)の場合、1日目に1枚エントリーして終わりのところ、
分割エントリーの場合は、「5日間」に分けて「0.2枚」ずつエントリーしています。
期間 | ドル円 | 全量エントリー(枚) | 分割エントリー(枚) |
1日目 | 100 | 1.0 | 0.2 |
2日目 | 101 | 0 | 0.2 |
3日目 | 102 | 0 | 0.2 |
4日目 | 103 | 0 | 0.2 |
5日目 | 104 | 0 | 0.2 |
6日目 | 105 |
分割エントリーは裏を返せば、分ける「時間」と「ポジション量」が不足する場合(例えば以下の例)、そもそも出来ないか十分に機能しません。
- 1分足以下のごく短時間のスキャルピング
- 裁定取引枚数に近いポジション量(0.1枚等)
分割エントリーの利益と損失
続いて、分割エントリーの通常(全量エントリー)と比した利益、損失についてです。
上述した表の利益(6日目で売却)は下表のようになります。
期間 | ドル円 | 全量エントリー(枚) | 全量の利益/損失 | 分割エントリー(枚) | 分割の利益/損失 |
1日目 | 100 | 1.0 | 5.0 | 0.2 | 1.0 |
2日目 | 101 | 0 | 0.0 | 0.2 | 0.8 |
3日目 | 102 | 0 | 0.0 | 0.2 | 0.6 |
4日目 | 103 | 0 | 0.0 | 0.2 | 0.4 |
5日目 | 104 | 0 | 0.0 | 0.2 | 0.2 |
6日目 | 105 | 売却 | 5.0 | 売却 | 3.0 |
エントリー期間にわたり価格が思った方向へ伸びる場合、上の表のように利益は全量エントリー>分割エントリーとなります。小出しにエントリーしてしまった分、利益が減りますね。
期間 | ドル円 | 全量エントリー(枚) | 全量の利益/損失 | 分割エントリー(枚) | 分割の利益/損失 |
1日目 | 100 | 1.0 | 5.0 | 0.2 | -1.0 |
2日目 | 99 | 0 | 0.0 | 0.2 | -0.8 |
3日目 | 98 | 0 | 0.0 | 0.2 | -0.6 |
4日目 | 97 | 0 | 0.0 | 0.2 | -0.4 |
5日目 | 96 | 0 | 0.0 | 0.2 | -0.2 |
6日目 | 95 | 売却 | -5.0 | 売却 | -3.0 |
一方で、損失方向に価格が伸び、最終的に損切した場合の損失もまた上表のように全量エントリー>分割エントリーとなります。
「分割している分、分割エントリーは利益が減って損じゃないか」、と利益方向のことのみ考えるのは適切ではありません。
利益と損失の観点においては、「分割エントリーは全量エントリーに比べ利益も損失もマイルドになる」程度の認識としておくことが良いでしょう。
分割エントリーの心理的効用

利益損失の観点からは全量エントリー、分割エントリーどちらが良い悪いということが言えない一方、
心理的な観点からは明らかに分割エントリーが優れていると言えます。
具体的には以下2点の効果があるため分割エントリーは優れています。
- プレッシャーを分散出来る
- 方向感を見失わなくなる
プレッシャーを分散出来る
プレッシャーを分散出来る、ということをもう少し具体的に説明すると、
「分割エントリーは複数に分けてエントリー=意思決定をするため、一回当たりの意思決定に対する、”自責の念”が希薄化する」というです。
根拠がそろい、勇気を出していざエントリーしたまではよいものの直後に価格が反転し、「自分の判断は正しかったのか?何か間違っていなかったのか?」と強い”自責の念”に駆られるというのは誰しも一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
個人的見解ですが、ルールを事前に定め、根拠通りのエントリーをした後に価格が反転したとして、”自責の念”を感じる必要は皆無だと思っています。ルール通りに動いたのですからむしろ、”自責の念”に振り回されてはいけません。
全量エントリー後はもう何も出来ず利確、損切を待つのみとなります。そしてもし全量エントリー直後から価格が反転したとしても結果を待つしかないとなれば、人間心理的に待つ間ひたすらトレードの落ち度を見つけ出して「過去の自分は間違っていた、次はもっと上手くやる」と反省すること自体は一方で自然な流れなのです。
分割エントリーの場合は、価格が反転してもまだ追いエントリーするというアクションが残されているわけですから、「このトレードは失敗だった」と早計する間もなく淡々とエントリーを繰り返すことが出来ます。
そして最終的に振り返ってみれば、意思決定を何度にも分けて行ったわけですから、「自分の意思決定にかかる責任」の所在もとても曖昧になり、必要以上に「自分が間違っていた」と反省することもなくなります。
方向感を見失わなくなる
方向感を見失わなくなるということは、そのまま「直後の値動きに惑わされず、エントリー当初に想定した価格の方向感を忘れない」ということです。
エントリーしたはいいものの、あっという間に価格が反転して損切し、逆方向かと思ってエントリーしなおせば再度反転して2度損切し…という経験をした方も多いでしょう。(そして結局価格は当初想定した方向へ進んでいく)
当初想定した価格の方向感をいつの間にか見失っているわけです。
分割エントリーすることで、前述の通り反対方向に値動きがあったとしても、全量エントリーよりも損失を限定出来るわけですから心理的な余裕が生まれます。
たとえ損切にあうまで反対方向に価格が急伸したとしても、心理的に追い詰められていないため、再度反対方向にポジションを持ち直すことをせずに順方向へのエントリーチャンスが再び発生するのを落ち着いて待つことが出来ます。
参考:分割エントリーと似て非なるトレードアイデアについて
以下、過去記事では「バンドウォークが発生し続ける限りポジションを持ち続ける」トレードアイデアについて紹介しました。
こちらで紹介したアイデアは、予め取れるリスクを計算しないでひたすら最小ロットを積み重ねる、というものですが、これと本記事の分割エントリーは似て非なるアイデアであるため注意が必要です。(過去記事内には「分割エントリー」とありますが、これは別の定義)
上記でひたすらポジションを積み重ねられるのは、トレーリングストップによって損失を限定する仕組みとセットだからです。
繰り返しになりますが、無計画なポジション積み重ねは損失拡大という結果になりかねないため注意しましょう。
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