今回は「市場でのトレーディングが期待値のゲームとはならない理由」を説明します。
期待値のゲームとは
ここでいう期待値のゲームとは、例えばポーカー、麻雀のように役と役ごとの点数が定められているものです。
以下では単純化のために、払い戻し点数の定められているコイン投げを例に出します。(これも期待値のゲームです)
- 1回あたりの掛け金は100円
- 表が出れば1000円払い戻し
- 裏が出れば0円払い戻し
コイン投げで表裏が出る確率は50%ですから、このゲームの期待値は、
表:1000円x0.5 + 裏:0円x0.5 = 500円 となり
掛け金100円より大きいため、掛け金を払ってエントリーすべきと考えられます。
ポーカー、麻雀などは上記がより複雑化されたもので、その状況に合わせ掛け金を払うかを判断する知的ゲームです。
このような期待値のゲームのポイントは、
- ゲームの勝ち負けの時点、条件が定義され、共有されている
- 確率は一定かつ偏りがない(イカサマがない前提として)
といった点にあります。
FX等市場でのトレーディングについて
FX等市場のトレーディング(以下トレード)はしばしば、上記のような期待値のゲームであると言われます。
売買値差を獲得することが目的(キャピタルゲイン)のトレードにおいては、
トレード機会/期間 x 期待リターン/回(勝つ場合)x 期待勝率/回 = 期待リターン/期間
という計算式にて期待リターンを想定することとなり、仕組みは期待値のゲームに似通っています。
しかし、以下の通り、トレードが期待値のゲームに成り得ない理由があります。
期待勝率は変化し、将来勝率を保証しない
トレードにおいて、手法は無数にあれど期待勝率を測定する方法は多くはありません。
基本的には、ヒストリカルデータを用いて過去状況にて手法の勝率を測定することになります。
しかしヒストリカルデータにおける検証はあくまで過去そうだったという情報に過ぎず、将来同様の勝率が継続することを保証するものではありません。
トレードにおける勝率とは参照する期間、環境等々他あらゆる変数に影響を受けるものであり、コインの表裏が50:50で出るのとは全く違うのです。
期待リターンと期待勝率に歪みがあれば、市場に矯正される
ある一定の期間における期待リターンと期待勝率の掛け算の結果として、期待値が1以上に成り得る手法があるとします。しかしこの手法は永久に有効ということはありません。
厳密な説明は行いませんが、期待値が1以上で安定している手法の存在が市場に認識されれば、同手法に対する手法が流行、同手法採用していたプレイヤーの撤退等を通して、長期的には手法の有効性は失われます。
これはつまり、期待勝率のみならず期待リターンというルールすら、トレードのプレイヤー間では共有されていないということです。
まとめ
トレードは、共有されたルールの無い世界で価格の歪みを見つけるゲームです。
ヒストリカルデータから算出される期待勝率、期待リターンだけを信じ、トレードはコイン投げのように期待値のゲームと思い込んでプレイすることは望ましい状態ではありません。
「トレードは期待値のゲームである」という言葉を信じすぎないように気をつけましょう。
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