こんにちは。今回の話は何かといいますと、
「中長期的(恐らくは日足レベル以上)なボラティリティの拡大・収縮の流れを見る」ことが、結局は最強のファンダメンタル分析になる、(恐らくはテクニカル分析にもなる)という話です。
お急ぎの方向けに、先にかなりラフな結論を言いましょう。
要は、「ニュースなんか見なくても、ボリンジャーバンドの拡大・収縮を見ればファンダメンタルは分析結果に織り込める」
ということです。
なお、ボリンジャーバンドのバンドを使ったトレードをする、という趣旨ではありませんのでご注意。

イメージのために、ドル円日足チャートを持ってきました。(from trading view)
ボラティリティの拡大、収縮だけを見るために、あえてボリンジャーバンド3σだけを別のパネルに分けて表示しています。
ファンダメンタル的なストーリー/紛争が起きて、資源価格が上がって、インフレが懸念されて…
上記を例として、ここ最近のファンダメンタル的なストーリーを振り返ってみましょう。
必ずしも確かな因果関係で連なるものではないですが、大まかな流れとして見てください。
- 2月下旬~ ウクライナ紛争発生
- 3月上旬~ 各国のロシアとの貿易関係忌避、ロシア資源輸入回避(+代替探し)⇒原油、ガス、穀物・・・諸々商品価格の暴騰
- 3月中旬~ 商品価格高騰(+過去のバラマキ)による悪いインフレの発生を懸念した米国において、利上げペース加速の動き ⇔ 日本は継続して金融緩和継続
と、まあ、このような流れを受けて、結局は「日米金利差が拡大」+「その状況が放置された」ためにドル円は急上昇したわけです。
毎日ニュースを見ていれば、「風吹けば桶屋が儲かる」ではないですがどこかのタイミングで「これはドル円上がるな」と予測できる可能性は十分にあったでしょう。
定量的ではないですが、これも一つのファンダメンタル分析です。
ただし繰り返しますが、分析手法として定量的ではありません。
テクニカル的なストーリー/2017年以来の116円を超えて…
こちらは、本題とは若干ずれますが、ついでにダウ理論的に今回の値上げを見てみましょう。

最初のチャートに一本水平線を足しました。
年初から2度揉んで超えられなかった116円を大きく上にブレイクしてから、急な上昇トレンドが発生した、と見ることが出来ます。
でもってこの116円は2017年以来超えていなかったラインで…とテクニカル分析上のストーリー(根拠づけというか味付けというか…)を見ていけば、「確かにここを越えれば急上昇するよな」と思っちゃう。
ただ、これだけでは不十分。「116円が意識された」というのは後知恵感がすごいです。
例えば、2021年10月には、2019年初以来超えなかった「114円」を超えました。だからと言って、急上昇はしなかった。(上昇トレンドが始まった、と解釈することも出来ますが、それは結局解釈)
結局、物事の順番として、
- 市場参加者が価格の歪みを予想する(ような世情変化が起こる)
- 価格の歪みが進んで、意識されていた重要な価格を越えてしまう
- 重要な価格を越えたこと自体もさらに市場参加者心理に影響を与え、さらに価格が歪む
という流れがあって、重要な価格を抜けたかどうかはその過程の一部でしかありません。
ボリンジャーバンドでボラティリティを見れば、ファンダメンタルとそれを受けた投資家心理が反映されている

さて、再び最初のチャートに戻ってみましょう。
世情が大きく動き始めた時期と、ボリンジャーバンド3σ(=ボラティリティ)が大きく拡大し始めた時期は同じです。(図中赤丸、3月上旬)
価格が大きく動く=SMAから乖離するほどボリンジャーバンドは拡大する*ので、当然のことを言っているだけなのですが、
その前のボラティリティが低い時期(図中青丸)との違いを「バンドの拡大」ということで一目瞭然に出来るところにボリンジャーバンドの良さがあります。
*
1.ボリンジャーバンドの計算方法
ボリンジャーバンドの上下バンドは、中央の移動平均線(Simple Moving Average:SMA)に標準偏差(σ)を加減したものです。以下の簡単な計算により求められます。
【各バンドの計算式】
±1σ 単純移動平均±標準偏差
±2σ 単純移動平均±標準偏差×2
±3σ 単純移動平均±標準偏差×3
この計算で用いる標準偏差は統計学で用いられる考え方です。平方根を使うなど計算方法はやや複雑ですが、簡単に言うとデータ(終値)が平均値からどれくらい散らばっているかを表します。
ボリンジャーバンドにおいてこの標準偏差が表すのは、直近n期間の各終値が、n期間のSMAからどれくらい散らばっているかということです。SMAから離れた終値が多ければ標準偏差は大きくなり、SMAに近い終値が多ければ標準偏差は小さくなります。この性質がバンド幅の拡大や縮小になって現れます。
OANDA様 https://www.oanda.jp/lab-education/technical_analysis/bollinger_band/standard_deviation/ より
この「バンドの拡大」は、価格が歪む物事の流れの非常にいいタイミングをとらえているわけです。
- ニュースが発生(世情変化のタネを市場参加者が認識)
- ニュースを受けて、参加者が反応(⇒ボラティリティが拡大⇒ここを認識できる)
- 市場参加者の反応を受けて、「ニュースが市場に与える影響」がニュース等で評価される
- さらに価格が歪む(⇒トレンドの発生、拡大)
ニュースの時点では市場へ与える定量的な影響が未確定なところ、影響が確定したところを評価するわけですから、このやり方は定量的分析であるともいえるでしょう。
まとめと補足
というわけで今回は最近チャートからボラティリティの拡大・収縮を見ることの重要性を説明しました。
繰り返しになりますが、ボラティリティの拡大・収縮が大事なのであって、ボラティリティが平均と比べてどうか、だったりボリンジャーバンドのバンド際でどうトレードするか、ということについてのべたわけではないことにご注意ください。
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