出来高について、あなたはどのような考え方を持っていますか?
出来高はトレード参加者の売り買い量そのものが数値として可視化されているという点で、非常に興味深い指標です。ですが、後述する2つの間違いに気づかないことには、出来高データを分析に活かすことは難しいでしょう。
今回は、出来高を分析する上での2つの間違いについて、「なぜそうなるのか?」を言語化してご説明します。
出来高は価格の変動に関係している(間違い①)
間違いその1は、「出来高は価格の変動と関係(相関関係)がある」というものです。
もう少し具体的にいうと、「出来高の大小を調べれば価格変動の方向性が読み解ける」という間違いです。

アバウトに切り抜いた上図チャートをもとに確認してみましょう。
上図中、垂直線で囲んだ範囲においては、価格は一方向に進み上昇トレンドが発生しています。
一方で、チャート下段の棒グラフで表示される出来高は、漸増しつつも右肩上がりというわけではありません。
垂直線の外に目を向けてみれば、むしろ左側の値動きの激しいポイントの方がトレンド中よりも出来高が多いことが確認できます。
これはつまり、
「出来高の増大(減少)傾向は、トレンドの成長(衰退)傾向に関係している」という仮説が誤っていることを示しています。
このことは、チャートを切り抜かなくてもチャートデータエクスポートし、「価格」と「出来高」の相関係数を取ってみることでも検証可能*です。
価格と出来高の相関関係はほぼ0ということがどなたでも確認できると思います。
*チャートデータのエクスポートについて、以下記事参照
出来高はボラティリティに関係している(間違い②)
間違いその2は「出来高はボラティリティに関係している」というものです。
つまり、「出来高の大小は、ボラティリティ≒値幅の大小と関係がある」という間違いです。

先ほどとは違う箇所ですが、再度チャートを見ながら確認してみましょう。
上図ではボラティリティを確認するために、ボリンジャーバンドを表示しています。
ボリンジャーバンドが拡大(収縮)傾向にあれば、ボラティリティも増大(減少)傾向にあります。
上図垂直線で囲まれた範囲においては、概ねレンジ形、ヨコヨコでボリンジャーバンド幅も収縮するよう推移をしていますが、同じレンジの中でも出来高は極端に少なくなったり、多くなったりします。
また、垂直線の外に目を向ければ、右方ではバンドウォークからのボリンジャーバンドの急拡大が生じていますが出来高自体はヨコヨコです。
上図からは、「出来高は、ボラティリティ縮小(拡大)で減少(増加)する」と言えないことが分かるかと思います。
なぜ出来高はトレンド、ボラティリティと関係がないのか?
では、何故出来高の増減が、トレンドやボラティリティと関係がないのかを考えてみましょう。
推測できる要因は以下の通りです。
- 出来高が大きくなる瞬間は、非トレーダーの通貨売買(企業の通貨調達等)が起こっているから
- 市場が注目する(していない)価格帯での売買は盛り上がる(盛り上がらない)から
1.について、実際に輸出入を行う企業や、銀行による通貨需要があることは確かです。実際の通貨需要による出来高とトレードによる出来高を分けて分析することも大変興味深いですが、トレード分析には関わらないため詳細は割愛します。
2.について、こちらが出来高を分析する上で重要視すべき要因と考えます。
理解する上で重要なのは反対方向のトレードをするプレイヤーの存在です。
例えば上昇トレンドで、勢いよく価格が上昇している最中で売りたいと思うプレイヤーは多くありません。上昇がひと段落してから売りたいと思うのは当然の心理でしょう。売り買いが均衡するところまでは価格は一方向に進んでいく、と考えれば、トレンドの最中に出来高が少ないのも理解できます。
また、レンジでボラティリティ縮小していれば売り買い共に過熱しない一方で、ボラティリティ拡大した場合でも反対方向のトレードをするプレイヤーがいない限り出来高は増えません(これはトレンドの場合も共通)
出来高を分析する意味(重要な売買ポイントを探す)
つまり出来高を分析する意味は、結局は「市場が注目する売買ポイント」が近いかどうか、ということと考え的を絞ったほうが良さそうです。
出来高だけでは「市場が注目する売買ポイント」について特定には至りませんので、これ以外のインジケーター(水平線等)と合わせて使うことになるでしょう。
一つ、出来高を活用する具体的なアイデアとして以下のようなものを挙げましょう。
- 水平線について複数描画する*
- 過去出来高が多いポイントでは、多くのプレイヤーがポジションを保有している(=重要である)と見て、それに最も近い水平線をより重要視する
*なお、水平線自体を無作為に引くためのインジケーターとして、以下記事でまとめました。ご参照ください。
出来高についてのまとめ
本記事の中では、出来高と値動きの具体的な方向性について述べることはしませんでした。
出来高の強弱が表す意味は、その時の市場ごとに異なっており一概には定義出来ません。
しかし一方で、出来高は如何に巧みなトレーダーでも隠すことの出来ないシグナルである、というのは間違いのない事実です。(巧みなトレーダーが勝っている、という前提ですが)
トレーダーは売買しなければ利益を生み出せません。巧みなトレーダーが玉を仕込む際にはそれが出来高の量として、どこかしらに現れているわけです。
そういう意味で、出来高はおまじないのようなインジケーターを用いたテクニカル分析から一段抜けてマーケットを分析する有用な手段足りえると考えられます。
マーケットを分析する際、インジケーターの分析からではなく、まず出来高を見ることから始めてはいかがでしょうか。新しい何かが見えてくるかもしれません。
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